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West Side Soul / Magic Sam’s Blues Band (LP / US-ORIGINAL)

Blues

ブルーズのレコードはオリジナル盤至上主義であるべきだ

レコードコレクターの中には、「オリジナル盤至上主義であってはならない」という主張をする人がいる。これに関しては私は肯定も否定もしない。オリジナル盤はその定義が曖昧であることも多い割にここ数年は値段も高騰し、もはや暴利と思われる価格で販売するショップやオークション出品者も増えてきた。一般的に音が良いと言われるオリジナル盤と、そうではない盤の音質の良し悪しの差など正直微々たるものだと感じることも多い。つまりオリジナル盤はコスパが悪いことも多々ある。あるいは、再生装置の差の方が出音に与える影響がソフトよりも大きい、というオーディオ愛好家の意見ももっとも、と感じることもある。そういった意味でアンチ・オリジナル盤派の主張は大まか共感している。

ただし、ブルーズに限って言えば私はオリジナル盤至上主義であるべきだと思う。残念ながらブルーズの名盤はごく一部を除き、JAZZの名盤のように毎年のようにリマスター・リカッティングされる恵まれた環境にはない。むしろ版権が切れたことをいいことに廉価で大量に模造品が生み出されているのがブルーズ。オリジナル録音ですら一発録りや貧弱な機材で製作された作品が多いブルーズ、廉価版はそれを基本的には単純コピペしているわけなので、当然ながらその音は劣悪だ。

ブルーズという音楽ジャンル上、なんとなくそういう劣悪さ、90年代的に言えばローファイ、がものすごく相乗効果を生みそうなムードもあるが、それはあくまでムード。オリジナル盤との差は大きい、というか雲泥、というか天国と地獄くらいの開きがある。つまり、上記のアンチ・オリジナル盤派の主張はブルーズに関しては音質面で当てはまらないため却下と言うのが私の主張だ。

無論正規レーベルによる再発盤に関してはそこまで差があるわけではないが、やはりオリジナル盤の持つ濃厚で野太くも美しい出音に比較すれば優劣は明らかである。

そんなわけで今日はブルーズの名盤について記していきたい。

名著「アナログ・レコードで聴くブルース名盤50選」

さて、私が広大なるブルーズの世界、かつ限られた予算の中でブルーズのオリジナル盤を聴いてみたい、と思ったときに道標にするのが本書である。

当然何でもかんでもオリジナル盤で聴きたいのは山々なのだが・・・ジャズであればまずはブルーノートの1500番台を集めるがごとく、ブルーズに関しては本書に掲載の50枚をまずはサブスクやYOUTUBEで視聴し、気に入った作品があればオリジナル盤で集めるところから始めていくのが良いのではなかろうか。

今回ご紹介する盤も本書に記載されているのでぜひ参考にされてほしい。

マジック・サムの代表作 / ウェスト・サイド・ソウル

アートワーク

マジックサムの代表作として名高い「West Side Soul」、こちらは一昨年のディスクユニオン冬のセールで入手した。価格は当時で35,000円くらい。想定していたよりもかなり割高ではあったが、ジャケ・盤面とも大変美品で状態でいうとEX〜EX+レベル。そもそも本作のオリジナル盤が市場に出ているのも珍しいと思ったので「清水ダイヴ」してしまった。

ジャケットはカラー写真に何故か緑色を上乗せしたアートワーク。おそらく発売当時の1967年の流行りであるサイケデリック調をあしらったのであろう。

後期になるとこの緑ペイントがされていないジャケットも登場する

裏ジャケット

裏ジャケット。ジャケット縁のあたりを見ていただければわかると思うが、ダンボール紙の上にカバーアートとライナーノートを後貼りしている仕様だ。

なお、その後の再プレス盤では裏ジャケは青文字に変更される。

レーベル・デッドワックス

お馴染み、デルマークレーベルだ。本作は1967年リリースということでモノラル盤もあるのかな?と探してみたがDiscogではフランス盤でどうやらMonoが存在する模様。

ただし、1曲目がオリジナルの「That’s All I Need」ではなくなっている。意図はよくわからないのだが、もしかしたら一部音源は別ソースを使っているからStereoとMonoの両表記なのかもしれない。

デッドワックス部分には手書きでマトが刻んである。ややこしいことに「615」の6が90度転がって書かれている。アメリカらしいというか、適当というか…

サウンドチェック:ジャケットとは打って変わっての爽やかアーバンスタイル

さてサウンドである。ジャケットがサイケデリックな感じなので、ついついジョン・リー・フッカーの諸作やマディ・ウォーターズの「Electric Mud」あたりを想像してしまうが、冒頭A1「That’s All I Need」から何ともカラッとした爽やかブルーズが響き渡る。

とんだ肩透かし、とでも言おうか。おどろおどろしいブギ地獄やエレクトリック・ウネウネ・サウンドの対極にある、Jimmy Reedのようなスッキリしたアーバンブルーズである。晴れた日に聴きたい良曲・良サウンドである。

音質面で言うとオリジナル盤だけあって各楽器の粒だちがはっきりしていて視界は良好。以前所有していた国内盤と比較すると、オリジナルは音が曇りなく明瞭、本作の出来の良さが際立っている。特に高音部はギターアンプの目の前に座っているようだ。真空管のナチュラルな歪みはギター弾きが感じるアンプ前ポジションの音そのもの。気持ちの良い音圧を感じることができる。

ブルーズアルバムあるある、の、「どの曲も全部似たような曲に聞こえる問題」も本作には一切ない。いわゆるズッチャツッチャ〜の繰り返しブルーズもありながら、スロー、ブギ調、BB風、ジャンプ、などバラエティに富んでおり聴き手を飽きさせない。

中でも出物はやはりB1「Sweet Home Chicago」であろう。

映画「Blues Brothers」の中でも「マジック・サムに捧げる」とあった通り、この曲をメジャーなものに押し上げたのはこのマジック・サムの演奏があったからこそ。ブルースブラザーズのあの場面を想像しながら、「あの演奏はマジックサムを参考にしてるんだな」と追体験できてしまう。まさに現代のスタンダードの礎となった演奏が聴ける。

↓どアタマのジョン・べルーシのMCでマジック・サムに触れる。

ブルーズこそオリジナル盤を買いたい

今日はマジック・サムを取り上げてみた。

冒頭に述べたように最近のレコード高騰の波は稲村ジェーン並みである。ブルーズも例外ではない。私も高騰化する市場についていけず最近は国内盤やリイシュー盤でお茶を濁すようなレコードハントしか出来ていない。

だが一つ心に決めていることがあって、それは冒頭に紹介した書籍「ブルース名盤50選」に掲載の50枚に関してはなんしてもオリジナル盤で買うこと。高校生の頃から付かず離れず聞いてきて、演奏してきたブルーズ。つまりは私の心の拠り所はブルーズなのだ。

この野望への道のりは遠そうだ。掲出されている50枚を全てオリジナル盤でコレクトすることは時間もかかるし資金も必要だ。だがブルーノート1500番台をオリジナルモノ盤で揃えるよりは再現度が高い気もする。いや、比較することではないが。

「一生モノは、一生が終わる前に買わないと楽しめないぞ」そんな言葉が頭をよぎる。資金不足やためらいを取り除く都合のいい理屈はこしらえてある。つまり、心の準備は万端だ。

さあ、今日もレコード掘りに行こう。

ご一読ありがとうございました。

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