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Voodoo Lounge / The Rolling Stones (UK-ORIGINAL)+Cassette Tape

Disk Review

ヴードゥー・ラウンジ発売30年

先日、ストーンズが1994年7月に発売したアルバム「Voodoo Lounge」(ヴードゥ・ラウンジ)の30周年記念盤発売が2024年7月12日にアナウンスされた。

ザ・ローリング・ストーンズ
『ヴードゥー・ラウンジ』30周年記念エディション

THE ROLLING STONES – VOODOO LOUNGE 30TH ANNIVERSARY EDITION

ザ・ローリング・ストーンズのアルバム『ヴードゥー・ラウンジ』の発売30周年を記念して、フィジカルとデジタルの両フォーマットのスペシャル・エディションの発売が決定。このリリースには、ストリーミング・サービスで初披露となる4曲が追加収録されている。

ストーンズの人気曲「ユー・ガット・ミー・ロッキング」、「アウト・オブ・テイアーズ」、全英トップ20シングル「ラヴ・イズ・ストロング」を収録した『ヴードゥー・ラウンジ』は1994年に発売され、全世界で600万枚以上を売り上げ、グラミー賞最優秀ロック・アルバム賞を受賞している。

『ヴードゥー・ラウンジ』30周年記念盤は、レッドとイエローの2LPカラー盤と、ボーナス・トラック4曲を収録した10インチを追加した、レッドとイエローの2LPカラー+10インチ盤(RS No.9(HARAJUKU店舗&特設サイト)限定商品)の2フォーマットで発売。

10インチに収録の曲はアルバムと同様、すべてジャガー=リチャーズの作で、1曲を除き、『ヴードゥー・ラウンジ』のレコーディング・セッションの終わりにダブリンのウィンドミル・レーン・スタジオで書かれている。

ストリーミング・プラットフォームで初めて聴くことができる4曲は、「アウト・オブ・テイアーズ」シングルのオリジナルB面であり、ロニー・ウッドによる素晴らしいスライド・ギター・パートが聴ける「アイム・ゴナ・ドライヴ」、1978年の『女たち』セッションに起源を持つ軽快な「ソー・ヤング」、「ユー・ガット・ミー・ロッキング」のB面「ジャンプ・オン・トップ・オブ・ミー」、そしてシカゴ・ブルースとのストーンズの断ち切れない絆を想起させるもうひとつのフリップサイド「ザ・ストーム」である。

UNIVERSAL MUSIC JAPANのオフィシャルページから引用

1994年発売の本作は長年ストーンズのオリジナルメンバーとしてベースを担当していたビル・ワイマンの脱退(引退)後、初のオリジナルアルバムである。

後任のベーシストは発売前には発表されず、「今回はダリル・ジョーンズがサポートで参加」という、極めてテンポラリー感、その場しのぎな雰囲気を醸すアナウンスのみだったことをよく覚えている。結果、2024年現在もいまだに後任ベーシストの発表はなく、ずーっとダリルがサポートとしてストーンズを支え続けているのはご承知のとおり。もう正式なメンバーって言っても過言ではなかろう。

本作は発売後イギリスでは1位、アメリカでは2位のダブルプラチナムを獲得したのだが、「Start Me Up」のようなシングルヒットが出なかったためかいかんせん地味な印象をお持ちの方も多いのではないだろうか?

確かにあの当時は派手さに欠ける印象は拭えなかったのだが、いま改めて聞き直してみると逆に味わい深く、最新作「Hackney Diamond」にも通じていくストーンズの新たな萌芽を感じられる楽曲も多い。

30周年記念盤の出るタイミングで、改めてUKオリジナル盤で本作を振り返っておこう。

Voodoo Lounge UKオリジナル盤

まずはアルバムジャケットから見ていこう。

本作はストーンズのオリジナル作品としては久々の2LP仕様である。ゲートフォールドジャケットを採用。発売元はVirgin。

94年はすでにCDが物理メディアの基本フォーマットであった。CD目線での収録時間をLPに落とし込んだら2枚組になっちゃった、というのが本音かと思う。

“Satan’s Play Room”, extracted from “Satan’s Daily Life in the 19th Century” by Jac Remise. 

ジャケットを開くと壮観なドクロのアートワークが。いかにもストーンズらしい。

謎の限定証明書 (Certificate Of Limited Edition)

なお、本作を私は5年くらい前にユニオンで中古で購入したのだが、その際に以下の2枚の紙が入っていた。

一つはこの証明書。どうやら世界5000枚のうちの347番、が私の限定番号のようだ。しかしながら、本作のアナログLPが限定生産だったようなことは調べてみても出てこない。いわゆるクラブエディションのようなものなのか?しかしながらこちらはUK盤、そういうのも考えにくいと思う。いくらCD全盛期とはいえストーンズはいまでも毎回LPを出しているし、何なら当時はカセットテープも出している。

私が所有しているカセットテープ。こちらもUK。音は別に良くない。

この辺の事情はご存知の方がいらっしゃったら是非コメント欄にてご教示いただきたい。

※後日、Xのフォロワーさんからご返信いただきました!感謝です!!

もう一枚はこのアート。

コピー用紙よりも若干厚めの紙に印刷されたストーンズ4名の写真。特に裏面等にも何の文字記載もない。先ほどの限定に伴う特典か何かかと思うのだが、いかんせんお粗末な印刷物とも言えなくはない。

よく見るとミックの着ているTシャツの柄が本作のアートワークであることから、これはヴードゥーツアー後に発売された再発LPなのか?という疑念も募ってくる。だが、下記のマトを見てほしい。

大変見難いのは恐縮だが、マト番はオール1。つまり初版である。

限定証明書・謎のアートワーク・マト番、この辺から何かお分かりになられる方、是非ともコメント欄にお願いします。

ちなみにこの時代のLPはDMMカットなのだが、とにかく重量が軽く薄っぺらい。何というか物体として弱、なのだ。音溝もそこまで深く掘ってないので、ちょっとしたミスで傷をつけてしまいそうになる。非常に取り扱い難い。

素晴らしき佳曲の数々

さていよいよ楽曲へ。

ちなみに本作発売時、私は15歳の中学生。ストーンズの新作をリアルタイムで購入・体験したのはこの作品からである。当時は輸入盤のCDで購入した。中学生のお小遣いではアルバム一枚買うのも一苦労…だからこそ、本作は貪るように何度も繰り返し聞いた。

中学生ながら一番心に沁みたのはキースが歌うB#1「The Worst」、この歌を聴いてキースの歌声に惚れ込み、高校生の頃にはキースベストテープなんかも作っていた。

キースがあのパーラーサイズのギターを弾きながら(かどうかはわからないが)「俺なんて最低の男だ」としわがれた声で歌う、何とも「らしい」1曲だと思う。

ノリの良いところで行くとA#3「Sparks Will Fly」も外せない。

軽快なチャーリーのフィルインで始まるこの曲はシングルカットはされなかったがストーンズらしい流れるようなポップなメロディが印象深い。

そういえば「チャーリードラム最速説」が流れたのはこれが初、だったのではないだろうか。ちなみに次作「Bridges To Babylon」の#1「Flip The Switch」が出た時にも「チャーリー史上最高速ドラム」とか言われてたな(笑)

B#2の「Moon Is Up」はミックのボーカルが美しいポップソング。

本曲のクレジットにはバッキング・ボーカルでボビー・ウーマックと記載されている。またDrumのところに「Mystery Drum」と記載あり。チャーリーがポリバケツを叩いている説、があったなと。

正直そのほか全ての楽曲にも触れたいが、百聞は一見にしかずである。是非とも皆さんも通しで聴いていただきたい。

発売30年後、から見たVoodoo Lounge

本アルバムからシングルカットされたのは「Love Is Strong」「I Go Wild」「You Got Me Rockin’」の3曲、だったがあまり売れなかった印象だ。80年代のストーンズはシングルヒットありき、で付随でアルバムという傾向があったように思う。この辺は当時のミックとキースの不仲なんかも絡んでいるのだろうと思う。

90年代に入り、ビルワイマンも脱退し、ミックとキースの仲も改善されてきた、そんな変革期に作られた本作。シングルヒットには恵まれなかったが、新生ストーンズとしてアルバム全体の統一感は直近数作の中では群を抜いて素晴らしい。

絶妙に歪みが大きくなったキースのギター、ロニーお得意のラップスチールギター、この辺のアプローチがリフと勢い一辺倒の80年代とは大きく違う。

特に特筆すべきはロニーの楽曲全体への絡み方。これまではやはり遠慮がちなセカンドギタリスト、に徹していた感があるのだが、今作あたりからキースと絶妙なコンビネーションを見せるようになる。どっちがリードでどっちがリズムかよくわからないが素晴らしい、っていうライブでの演奏スタイルもこのくらいの時期から徐々に顕著になってくる。

今作プロデューサーに起用されたドン・ウォズの制作ビジョンが当時における現代性とストーンズの培ってきたこれまでの音楽を絶妙のところでミックスアップし、アルバムとしての完成度を高めていることも触れておきたい。90年代、ブリットポップとオルタナサウンド、メロディックパンクなどの比較的シンプルで勢いのある楽曲が好まれた時代背景の中で如何にストーンズのレゾンデートルを再定義するか。

余談だが90年代当時、すでに「ストーンズ衰え論」みたいなものがいろんなところで囁かれていた記憶がある。「ミックももう流石に声が出なくなってきた」「チャーリーのドラム、遅くなってない?」的な、いわゆる加齢を揶揄するようなコメントも一部雑誌やメディアでは掲載されていた記憶がある。

今思えばこのアルバムから30年、チャーリーはすでに他界してしまったが他のメンバーは衰えどころかますます冴え渡っている。傑作と呼んでいい最新作「Hackney Diamond」まで生み出してしまったのだから、あの頃の加齢揶揄説が如何にくだらないものだったか、今になればそう思う。

2024年現在のストーンズの活躍はご存知の通り。当時ドン・ウォズが思い描いた再定義は間違ってなかった何よりの証左であろう。もちろん、ストーンズ最大のプロデューサーにして世界最高峰のロックシンガー、ミックのビジョンがそこにあってこそ、だ。

ちなみにドン・ウォズは次作「Bridges To Babylon」でもプロデュースを担当するが、こちらは正直「やりすぎ」感も否めない。その辺はまたの機会に。

30周年記念盤を楽しもう

中学生の時にリアルタイムで聴いたときから30年、あれから30年も経ってしまったなんて信じられない。なんてことは先日もグリーンデイの「Dookie」の記事で書いた。

時代が進んで、今はあの頃よりも便利になった。サブスクがある一方でアナログレコードもブームとなり、今や大概の新作はLPで入手できるようにもなった。90年代ではほとんど考えられなかったことだ。

レコード愛好家としてはやはり大好きな作品はアナログレコードで聴いてほしい!と心から思う。「周年のたびに特別盤出してアコギなレコード会社のビジネスよ・・・」なんて思うこともあろうが、そこら辺は無視して自然にこのストーンズ最高の佳曲集を楽しんでもらえればと思う。

今日もご一読ありがとうございました。

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