Dave Brubeck Quartet『TIME OUT』USオリジナルモノラル盤視聴レビュー – ジャズ初心者にも最適な名盤

Disk Review
スポンサーリンク

今日紹介するのは、まさにジャズ入門者にうってつけ、ジャズと言えば、ジャズっぽい、そんな雰囲気にあふれる名盤をご紹介したい。

夜更けの静けさに包まれた部屋でふと針を落としたくなるような一枚。ジャズ初心者からマニアまで虜にする、特に日本では「ジャズといえばこの曲」と広く親しまれてきた「TAKE FIVE」を収録したアルバム、『TIME OUT』だ。レコード棚から取り出すときのわずかな緊張感、盤面の光沢、ターンテーブルの上にそっと置かれるその重み。窓の外で瞬く街灯、コーヒーの香り、そして胸の高鳴りが、聴き手を特別な時間へと誘う。今回は、USオリジナル盤モノラルレコードの特徴を踏まえながら、ジャズの世界に足を踏み入れるための最適な一枚としての魅力を伝えていければと思う。

スポンサーリンク

Dave Brubeck Quartet『TIME OUT』

パーソネル

  • Dave Brubeck (piano)
  • Paul Desmond (alto saxophone)
  • Eugene Wright (bass)
  • Joe Morello (drums)

収録曲

  1. Blue Rondo à la Turk
  2. Strange Meadow Lark
  3. Take Five
  4. Three to Get Ready
  5. Kathy’s Waltz
  6. Everybody’s Jumpin’
  7. Pick Up Sticks

『TIME OUT』というアルバム

1959年、Columbia Recordsからリリースされた『TIME OUT』は、ジャズ史上において非常に特異な存在となった作品だ。ブルーベック・カルテットは、ツアー中に中東やトルコの伝統音楽に触れ、そこからインスピレーションを得て、変拍子を取り入れるという大胆な試みに挑戦した。これが西洋音楽においては珍しい試みであり、ブルーベックはそれをジャズという枠組みの中で展開したのだ。このアルバムの特徴は、4拍子や3拍子に縛られることなく、聴き手を新しいリズムの世界に誘うという点で、非常に革新的だった。

プロデューサーのテオ・マセロは、商業的にはリスクを伴うこのプロジェクトを支援し、ブルーベックと彼のカルテットは大胆に挑戦を続けた。その結果、アルバムはリリースされるやいなや、ジャズ界にとどまらず、一般層にも大きな影響を与えることとなった。アルバムの中でも特に注目されたのが「Take Five」で、これはポール・デスモンド作の5/4拍子の曲で、リズムとメロディが絶妙に絡み合う名曲として今なお語り継がれている。(以上、錯綜するソースが多いが私はWikipediaを引用元とした)

『TIME OUT』は、アメリカ国内でヒットし、ジャズの枠を超えた社会現象となった。特に「Take Five」がビルボード・ホット100にチャートインしたことは、ジャズの商業的成功を証明する重要な出来事であった。評論家たちもその革新性と大衆性を高く評価し、今日に至るまでジャズやポップ音楽に与えた影響は計り知れない。一方、日本においてもこのアルバムは、1960年代のジャズ喫茶ブームや深夜ラジオの普及により、ジャズファンの間で広く親しまれた。特に「Take Five」は、耳に残るリズムとメロディで、日本のテレビCMや映画のBGMとして数多く使用され、その後、ジャズ入門編としても多くの人々に紹介されていった。

「TAKE FIVE」の人気の秘密

「Take Five」は、ポール・デスモンド作の5/4拍子の曲であり、当時としては非常に斬新なアプローチだった。5/4拍子というリズムは、聴き手にとって異質に感じられるかもしれないが、デスモンドのアルトサックスがそれを非常にメロウに、そしてクールに響かせることで、独特の魅力を持っている。ブルーベックのピアノがシンプルながらも洗練されたリズムを刻み、モレロのドラムソロがその空間をさらに引き締める。ライトのベースも静かに、しかし確実に支えとなり、全体のバランスを保っている。

この楽曲が特に人気を集める理由は、リズムの面白さに加えて、演奏者たちが織りなす絶妙なアンサンブルにある。聴き手は、曲の中で何度も変化するリズムを感じ取りながら、同時にそのメロディに自然と引き込まれていく。さらに、ジャズ初心者にも受け入れられる耳馴染みの良さがあり、最初はそのリズムの異質さに驚かされるかもしれないが、聴くうちにその独特の世界に引き込まれていく。

USオリジナル・モノラル盤について

では私の所有盤を見ていこう。

コロムビアのモノラル盤は規格番号がCLから始まる。本作はCL1397がオリジナルモノラルの番号。なお、「TAKE FIVE」があまりに人気になったことから、のちに曲名もジャケに表記されるようになる。

レーベル面はこちら。

安心と信頼の(?)、コロムビア6EYEレーベルである。

では音の方のレビューを。

モノラル盤に針を落とした瞬間、まず耳に飛び込んでくるのは、音の厚みと密度だ。『TIME OUT』のモノラル盤は、どこか温かみを感じさせる音色で、楽器一つ一つの音がより密接に結びついている。例えば、「Blue Rondo à la Turk」の序盤、ブルーベックのピアノソロが始まると、音の一体感が驚くほど深く、聴き手を音楽の中に引き込む。やがてドラムとベースが加わると、その音の広がりが一層感じられる。「Take Five」のシンプルながらも印象的なメロディは、モノラルの音場では特に空間的な広がりが感じられ、デスモンドのアルトサックスが空気を揺らすように響く。モレロのドラムは、ステレオではわかりづらい微細なニュアンスまで鮮明に聴こえ、聴き手にその迫力を余すところなく伝える。通常モノラル盤と言うとやはり中音域の厚みと音圧を強調したくなるのだが、本作はそれにあまり当てはまらない。どちらかというと「これほんとにモノラル?」というくらいに音がクリアで中音域強調形ではない。シンバルの鳴り方、ピアノの高音域のキラメキ、サックスの温かみが音場広く響き渡る。かといってステレオのそれよりもぎゅっと実が詰まった音楽を聞かせてくる。稀有なモノラル盤である。このクリアさはもしかしたらオリジナル盤ならではのフレッシュさから来るのかもしれない。

このアルバムはおしゃれな音楽が満載されているが、決して上品に聞くものじゃない。ジャズ本来の魅力である荒々しい勢いの魅力も本作は持ち合わせている。できれば大音量で聞くべき作品だ。

言わずもがな本作『TIME OUT』は音楽を専門的に学ぶ者にとってもリズムの冒険や、アンサンブルの妙、録音技術の結晶として多くを教えてくれる。ジャズの世界に触れるための入門盤としても最適であり、このアルバムを手に取ることで、ジャズの深みや魅力を感じる第一歩を踏み出せるはずだ。

ぜひ一度、できる限りの大音量でレコードプレイヤーの前で耳を傾け、その奥行きと豊かさに心を委ねてみてほしい。

個人的な推し曲:「Three to Get Ready」

「Three to Get Ready」は、『TIME OUT』の中でも特にリズムとアレンジが際立つ一曲で、ジャズの自由な表現が堪能できる作品だ。変拍子が巧みに使われており、特に聴き始めのリズムが変化する瞬間には、聴く者を引き込む力強さがある。このリズムの不安定さが逆に曲に独特の魅力を加え、リスナーに新たな発見をもたらす。ブルーベックのピアノの旋律は、かわいらしく語りかけるように曲全体を導き、過剰にならずに程よい距離感で響くその音は、モノラル盤で聴くと特に力強く感じられる。アンサンブル面では、モレロのドラムがリズムの不安定さを支え、ライトのベースがしっかりとした土台を築き、デスモンドのアルトサックスがメロディーラインを華やかに奏でることで、全体に絶妙なバランスが生まれる。即興演奏ならではの自由度が色濃く反映されており、音の隙間や余韻が心地よさを感じさせ、ジャズの持つ本来の魅力を存分に楽しめる曲だ。

まとめ

『TIME OUT』は、ジャズというジャンルにおける金字塔であり、なおかつ入門編としても最適な作品だ。モノラル盤の音響が持つ独特の温かさと一体感は、初めてジャズを聴く者にも強く響くはずだ。個々の楽器が奏でるリズムとメロディのバランスが絶妙で、聴けば聴くほどその深みにはまっていく。音楽史においても重要な位置を占めるこのアルバムを聴くことで、リズム、アンサンブル、そして録音技術の巧妙さを学ぶことができるだろう。音楽ファンならば、ぜひ一度この盤を手に取り、できる限りの大音量で気取らずにじっくりと聴いてみてほしい。

コメント

タイトルとURLをコピーしました