FPが語る「金持ち父さん、貧乏父さん」投資初心者へのレビュー

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今日紹介する本は、お金を増やすうえで大切な、基本となるマインドセットを教えてくれるものだ。前回紹介した山崎元氏の著作が「引き際のマインドセット」だとするならば、今回は「はじめの一歩のその前に作っておきたいマインドセット」とでもいおうか。非常に大切な考え方である。

現在の日本経済は、長らく続く低金利政策と、近年顕著になってきた物価上昇、すなわちインフレの兆候が共存する複雑な状況にある。銀行預金に資産を置いていても金利は雀の涙であり、実質的な価値は目減りしていく一方だ。このような時代において、自身の資産を守り、そして増やしていくためには、もはや「貯蓄だけ」では限界があると言わざるを得ない。

投資は一部の富裕層や専門家だけのものではなく、一般の人々にとっても生活を守り、将来を豊かにするための必須スキルとなりつつある。しかし、何から始めれば良いのか、どんな知識が必要なのかと戸惑う投資初心者は少なくないだろう。

そこで今回、音楽好きな私が、一応保有しているFP(AFP)の視点から投資初心者の方々へ強く推奨したい一冊がある。それがロバート・キヨサキ著「金持ち父さん、貧乏父さん」である。この本は具体的な投資手法を解説するものではないが、お金に対する根本的な考え方、金融リテラシーの重要性、そして資産形成へのマインドセットを劇的に変える力を持つ。

まさに「お金の教育」の入門書として最適な一冊と言える。

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この本はこんな人におすすめ

  • 金融リテラシーの基礎を学びたい人: お金に関する学校教育を受けてこなかったと感じるすべての人にとって、金融の「常識」を覆すきっかけとなるだろう。
  • 「お金のために働く」というサイクルから抜け出したいと考える人: いわゆる「ラットレース」からの脱却を目指す人にとって、そのための思考法と行動指針を提供する。
  • 「資産とは何か」「負債とは何か」を正しく理解したい人: 漠然としたお金のイメージを具体的な「資産」と「負債」の概念として捉え直す手助けとなる。
  • 起業や投資に興味はあるが、何から手をつければ良いか分からない人: 実践的な手法よりも、まず「なぜそれが必要なのか」という根本的な動機付けと方向性を示してくれる。
  • 精神的な豊かさと経済的な自由の両立を目指したい人: お金持ちになることが単なる富の蓄積ではなく、自由な時間の獲得や自己実現に繋がるという視点を得られる。

内容の要点

この本が繰り返し訴えかける核心は、以下の点に集約される。

  • 資産と負債の明確な区別: 「資産とはポケットにお金を入れてくれるもの、負債とはポケットからお金を奪っていくもの」という独自かつ明快な定義を提示している。
  • 「ラットレース」からの脱却: 給料を得て支出を繰り返すだけの生活サイクル(ラットレース)から抜け出し、経済的自由を獲得することの重要性を説く。
  • 金融リテラシーの習得の必要性: 会社や学校では教えてくれないお金に関する知識、すなわち金融リテラシーを自ら学び続けることの価値を強調する。
  • ビジネスオーナーや投資家になることの奨励: 従業員や自営業者として働くことだけでなく、ビジネスを所有することや資産に投資することでお金を働かせる視点を持つことを促す。
  • 恐怖と欲望の克服: お金に対する「失うことへの恐怖」や「欲しいものを手に入れたいという欲望」といった感情をコントロールし、賢明な判断を下すことの重要性を指摘する。

深掘り:なぜ今、「金持ち父さん、貧乏父さん」なのか

本書の真髄は、具体的な投資商品やテクニックを教えることではない。むしろ、お金に対する私たちの「思考」や「パラダイム」を根本から変革することにある。FPとして多くのクライアントと接する中で、多くの方が抱えるお金への漠然とした不安や誤解は、まさにこの「思考の枠組み」に起因すると痛感する。

NISAやiDecoなどの金融の枠組み・制度を示す単語が先走りしているいまだからこと、本書でその制度を活用する理由をしっかりと学ぶべきであると私は思っている。なぜ今なのか、の理由はズバリ、「マインドセットなしに投資などはじめても良い結果を生むとは思えない」と思うからだ。まずは心構え、そしてファイナンシャルプラン、そのプランを達成するための制度活用、という順番を今こそ再認識すべきである。

資産と負債の真の理解:

「金持ち父さん」が提唱する「資産はポケットにお金を入れてくれるもの、負債はポケットからお金を奪っていくもの」という定義は、多くの人にとって衝撃的かもしれない。一般的な会計上の定義とは異なり、著者はこの定義を個人のキャッシュフローという視点から提示する。

例えば、多くの人が「資産」と考える持ち家も、住宅ローンや固定資産税、修繕費など、継続的に支出を生み出すのであれば「負債」と見なされる。一方で、賃貸収入を生む不動産や、配当を生む株式などは「資産」となる。このシンプルな定義を理解することで、私たちは購入しようとするものが本当に自分を豊かにする「資産」なのか、それとも将来の負担となる「負債」なのかを客観的に判断できるようになる。この視点は極めて重要であり、クライアントの家計診断やライフプランニングにおいても常にこの視点からアドバイスを行っている。

このあたりはAll Aboutの記事に詳しいのでぜひとも参照してもらいたい。

「ラットレース」からの脱却:

本書の大きなテーマの一つに「ラットレース」からの脱却がある。これは、多くの人々が陥りがちな「仕事をして給料を得る→そのお金で生活費や欲しいものを買う→また仕事をして給料を得る」という、まるで回し車を走るネズミのような終わりのないサイクルを指す。このサイクルの中では、いくら収入が増えても支出も増え、結果として経済的な自由は得られない。金持ち父さんは、このサイクルから抜け出すためには、収入源を「勤労所得」だけでなく、「不労所得」(資産から生まれる収入)や「ポートフォリオ所得」(投資から生まれる収入)へとシフトさせる必要があると説く。これは単なる理想論ではなく、FPの立場から見ても、多様な収入源を確保し、それらを賢く管理することが経済的安定への道であることは間違いない。

【本解説】金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラントより引用

金融リテラシーの絶え間ない習得:

「金持ち父さん、貧乏父さん」は、お金に関する知識を自ら積極的に学び続けることの重要性を強調する。学校教育ではほとんど触れられない税金、会計、投資、市場の仕組みといった分野は、社会に出てから私たち自身の生活に直結する。金融の世界は常に変化しており、新しい金融商品やサービスが次々と生まれる中で、自ら学び、情報をアップデートし続けることなしには、賢明な判断は下せない。

FPは専門知識を提供する立場だが、クライアント自身が基礎的な金融リテラシーを身につけることは、私たちのアドバイスをより深く理解し、自身のライフプランに主体的に取り組む上で不可欠であると考えている。

ビジネスオーナーや投資家としての視点:

多くの人は「従業員」として働き、給料を得ることで生計を立てる。しかし、金持ち父さんはそれだけでは経済的自由は得にくいと指摘し、自らビジネスを所有する「ビジネスオーナー」や、お金に働いてもらう「投資家」としての視点を持つことの重要性を説く。これは何も会社を辞めて起業しろという意味ではない。自身のスキルを活かした副業から始めることもできるし、少額からでも株式や不動産に投資を始めることもできる。重要なのは、自分自身が収入の源となる「資産」を築くというマインドセットを持つことだ。

FPとしては、個人のリスク許容度や目標に応じて、どのような投資戦略が最適か、そしてビジネス的な視点をどのように生活に取り入れるかを共に考えるきっかけをこの本は与えてくれる。

恐怖と欲望のコントロール:

お金に対する私たちの行動は、しばしば「失うことへの恐怖」や「もっと欲しいという欲望」といった感情に左右されがちだ。株価が下がればすぐに売ってしまいたくなり、良い話を聞けばリスクを顧みず飛びついてしまう。金持ち父さんは、これらの感情を認識し、コントロールすることの重要性を指摘する。これは投資だけでなく、人生全般において非常に重要な教訓だ。感情に流されず、冷静な分析に基づいた論理的な意思決定を下す訓練は、金融の世界で成功するための鍵となる。

FPの視点からの補足とアドバイス

著者のロバート・キヨサキ氏

「金持ち父さん、貧乏父さん」は、お金に対する思考の「地図」を与えてくれる素晴らしい入門書である。しかし、この本を読んだだけで具体的な投資で成功できるわけではない。それは例えるなら、車の運転教習所で交通ルールを学んだだけで、実際に公道を安全に走れるようになるわけではないのと同じだ。

FPとしてこの本を推奨する一方で、以下の点も付け加えておきたい。

  1. 概念書としての位置づけ: 本書はあくまで「概念」や「マインドセット」を学ぶためのものだ。具体的な株式銘柄や不動産投資の手法、税制上の優遇措置など、実践的な情報は書かれていない。その点については、別途専門書を読んだり、FPのような専門家のアドバイスを求めたりする必要がある。
  2. アメリカの状況がベース: 本書はアメリカの税制や法制度、市場環境を前提に書かれている部分がある。日本の読者がそのまま当てはめようとすると齟齬が生じる可能性があるため、その点は注意が必要だ。日本の制度に合わせた知識の補完が欠かせない。
  3. リスクの理解と管理: 「金持ち父さん」は投資の可能性を強調するが、投資には常にリスクが伴うことを忘れてはならない。リスクを正しく理解し、自身の許容範囲内で分散投資を行うなど、適切なリスク管理を行うことが重要だ。
  4. 自分自身の「金持ち父さん」を見つける: 本書を読み終えたら、ぜひあなた自身の「金持ち父さん」(つまり、お金の知識や経験を教えてくれるメンター)を見つける努力をしてほしい。それは書籍かもしれないし、セミナーかもしれないし、あるいは信頼できる金融の専門家かもしれない。

まとめ:まずはマインドセット。テクニカルなことはその後でも十分間に合う!

「金持ち父さん、貧乏父さん」は、投資の旅に出るにあたっての「心の準備」と「羅針盤」を与えてくれる一冊である。お金に対する見方、働き方、生き方そのものに大きな影響を与える可能性を秘めている。これから新NISAをつかってみたい、とか、資産形成について学びたい、という若い方にこそ、この本をまずは読み、自身の金融リテラシーを高める第一歩を踏み出し、より豊かな未来を築くための行動を始めることを強く推奨する。

名著、とよばれるには理由がある。一度読んでわからなくても構わない。勉強を続けていくうちに、「そういえば・・・」と思い出すのはおそらくこの本の中に書いてあることだ。

隷好堂
隷好堂

仙台市出身・東京在住の40代サラリーマン。2級ファイナンシャル・プランニング技能士/AFP資格保持。音楽と旅が大好き。

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