スポンサーリンク

母をたずねて三千里

Disk Review

シングルジャケットの誘惑

私はもっぱら12インチLPレコードコレクターなので、12インチのシングル盤や7インチは専門外なのだが、ついつい毎回ディスクユニオンの7インチシングルの面出し(棚ないし壁面にジャケットが見えるようにディスプレイされている)はチェックしてしまう。

今回はそんなついつい、からの、懐かしさ爆上がりになってしまって手に入れてしまった本作を紹介したい。懐かしさと共に、「あー、こんなアニメあったなぁ」くらいでお付き合いいただければ幸い。

「母をたずねて三千里」とは?

今回紹介するのはアニメ「母をたずねて三千里」のシングル盤レコードである。

40代以上の方にはすぐにご理解いただけると思うが、一応どんなアニメだったかWikiから引用しておく。

母をたずねて三千里』(ははをたずねてさんぜんり)は、1976年1月4日から12月26日まで、フジテレビ系列で毎週日曜19:30 – 20:00(JST)に全52話が放送された、日本アニメーション制作のテレビアニメ。世界名作劇場の2作目に当たる。

※ちなみに世界名作劇場は第1作が「フランダースの犬」第2作がこの「三千里」、そして第3作が「あらいぐまラスカル」である

(中略)

1882年のブエノス・アイレス(アルゼンチン共和国の首都)に出稼ぎに行ったまま、音信不通になっている母アンナ・ロッシを尋(たず)ねるべく、主人公のマルコ・ロッシがイタリア・ジェノヴァからアルゼンチンへと渡る姿を描く。

大きく分けて南米行きの船に乗るまでの日常ドラマと、渡航した後の旅物語の2つが物語の主軸となっており、全編を通して記録映画のように主人公の言動を客観的に描写する姿勢が貫かれている。また主人公のマルコは旅の途中で何度も危機に陥り、そこで出会った多くの人に助けられ、また時には助け、その優しさに触れながら成長していく。最終回でも旅中で世話してくれた人々の何人かに再会し、お礼を言いながらジェノヴァに帰って行くストーリーが描かれ、「人々の思い遣りと思い遣りに対する感謝の気持ち」も物語のテーマのひとつとして貫かれている。

Wikipediaより引用

主人公マルコ、思い出していただけただろうか。私もWikiを読んで改めて「あ〜南米一人旅してたんだ、子供なのに。すげぇな、マルコ」と改めて気付かされた。

ちなみに余談だが誰しも疑問に思っていたこと、「なぜマルコの母がイタリアからアルゼンチンまで出稼ぎ(何しに?)にいって、なぜ一人でマルコは母親を探しにいったのか?」、この理由もWikiには載っている。一応引用しておく。

また原作の中で、なぜマルコの母親がアルゼンチンまで出稼ぎに行くことになり、なぜマルコが一人で母親を探しにアルゼンチンまで行くことになったかという理由が書かれておらず、アニメを制作する際にこれらの設定を考えるのに苦労したという。最終的に、父親は貧しい人のために無料で診察できる診療所を作ろうとして借金を抱え、その返済および生活費を稼ぐため、母親がアルゼンチンに出稼ぎに行くことになり、その後連絡が途絶えた母親を捜しに行きたくても、父親は診療所を閉鎖する訳にもいかず、また兄も鉄道学校で機関士の見習いをしているので学校を休む訳にはいかず、その結果マルコがアルゼンチンに行く、という設定となった。

Wikipediaより引用

原作のせいでもあるが、なんとも強引な設定、ある種「答えから逆算」、無理にも程がある。昭和の矛盾・強引さはこういうところなんだろうと今更思う。

しかし子ども時分の私にはその辺はどうでも良かったのだろう、多少は言語化できないけれど気づいていた。そして毎週楽しみに見ていた気がする。

それではこのシングルジャケットと共に本作を振り返っていこう。

登場人物

このシングル、子ども向けに発売されたこともあって登場人物の詳しい説明書きがジャケット裏面に記載してある。

このように豪華三つ折りジャケットである。ゲートフォールドほどの厚みはないが、それでも結構な厚紙に印刷されている。子どもが何度も見返すことを想定して丈夫にしているのだろう。心遣いが素晴らしい。

登場人物部分をアップにしたものも置いておく。

猿のアメデオ、妹のジュリエッタはなんとなく記憶があるのだが、兄(トニオ)、馬車の中のコンチェック?は全く覚えがない。

逆にこの中で私が一番覚えがあるのは馬車を操る陽気なオヤジ、ペッピーノさんだ。

・・・むむむっ、ペッピー?ペッピーなの??ペッピーノさんじゃないのか?あのサーカス団?を率いていた人は「ペッピー」じゃなくて、イタリアっぽい名前の「ペッピーノ」、だった記憶なのだが・・・

またまたWikiで調べてみると、やはり「ペッピーノさん」が正しいようだ。旅芸人ペッピーノ一座の座長となっていて、声優は永井一郎氏。サザエさんの波平でお馴染みである。

ちなみに3つ折りインナージャケットの左端でマルコと佇むお爺さん、こちらは名前が書いてない。多分1面余ったからそれっぽいカットを入れたんだと思う。

歌詞

さて3つ折りジャケットの逆サイドを見ていこう

こちらは歌詞カード。後ほど音源にも触れるが、A面「草原のマルコ」(アニメのオープニング曲)はなかなかドラマチックな歌詞である。

難癖つけてもしょうがないのだが、歌詞の一節「母さんのいる あの空の下 はるかな北を 目指せ」の北、なのだが、イタリアからアルゼンチンに向かうんだから「南」が正しいんじゃないだろうか?
子供の頃から「おかしいなぁ・・・」と思いつつ、この辺はまぁ韻を踏んだとか音の数の関係とか最後にはイタリアに帰るから北でいいんじゃね?とか、色々と大人の事情があるんだと思う。

収録曲

さて、収録曲を見ていこう。

三つ折りジャケットの最背面、おっとこちらにマルコのお父さんお母さんの紹介も出ている。物語の中では最重要人物の母親だが、正直なかなかマルコが母親の元に辿り着かないことからキャラとしては影が薄い。父親はそれ以上に薄い。おそらく私の記憶でも初見である。

ともあれ収録曲はアニメのオープニング曲とエンディング曲の2曲。シングルの王道である。

こちらがレーベル面。通常のレコハントであればマト番も調べたりするところだが、この場合は野暮ってもんだろう。

歌い手は両面とも大杉久美子さん。「アタックNo.1」の主題歌でブレイクし、本作含む「世界名作劇場」での初期作品の歌唱を担当していたようだ。Wikiによると、「卓越した歌唱力と包み込むような優しい歌声で、ささきいさお・堀江美都子・水木一郎とともに、1970年代には「アニソン四天王」として活躍した」とのこと。

さて肝心の曲であるが、A面「草原のマルコ」はこちら。

曲中盤でのテンポチェンジが凄まじい。マイナー調な曲であるがどこか前向きな突進力を感じる。ところどころに聞こえるリコーダー、およびガットギターの音色がなんとなく南米、スパニッシュ、フォークロア風ではある。

アニメのイメージも相まってちょっと寂しげだ。リピートで聴くのは正直辛い。

B面は「かあさんおはよう」である。

うって変わってこちらはアコーディオン、マンドリンの音色が楽しげなワルツ調のエンディングテーマである。タンバリンの「ン、チャチャ」のリズムに合わせてマンドリンとフィドルのインターバルが何ともほんわかした雰囲気を醸している。一方で歌詞の方はオープニングで攻めすぎた余韻か、「かあさん」によせざるを得ず無理やりメロディに歌詞をつけ、足りないところは「ボンジョールノ」などのイタリア単語を入れて「埋めた」感は否めない。こちらもいい曲だとは思うのだが、アニメのエンディング以外でどんな場であればプレイ可能なのか、DJ泣かせな一曲である。

驚きと発見・記憶との間違い探し

以上、今回は閑話休題的に経路の違うシングル盤を取り上げてみた。

記憶とは不思議なものだ。

自分の中で既成概念、「こうであったはずだ」と思うようなことが、30年以上の月日を経て改めて向き合ってみるとそうではなかった、ということに気づく。たかだかアニメの主題歌、ではあるのだが、このシングル盤に出会うことで改めて「母をたずねて三千里」のあらすじを認識することができたし、その物語の昭和アニメならではのギャップ、それは子供の頃薄々感じていた違和感だったのだが、やはりその感触は間違ってなかったことを知ることができた。

絶対だ、と思っていたものが、実はそうではなかった。そういう驚きも新鮮で素直に楽しめるようになった。

だからこのシングル盤も見つけた時に躊躇なく購入できたのだろう。ちなみに680円で購入した。大人なんだから躊躇するな、ってね。

加齢は悪いことばかりじゃないな。人生は驚きと発見に満ち溢れてるね。

読んでくれてありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました