Junior Wells『Hoodoo Man Blues』UKモノラルレコード:シカゴブルースの魂を刻む至高の一枚

Blues
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久しぶりに来たっ!これぞ探し求めていた逸品!ついに出会えた!!!

久しぶりに平場のレコード箱を漁っていて指先が震えた。ジュニア・ウェルズの『Hoodoo Man Blues』のモノラルレコードを見つけてしまったのだ。まさに会心!ずーっと探していた、そして「多分存在しないんだろうなぁ・・・」とやんわり思っていた本作のモノラルレコード。何気なく掘ったレコード箱の中に、気せずして入っているなんて。個人的には心でまずはガッツポーズ、そして値札見て更にガッツポーズ、視聴させてもらって万歳三唱!!!ってくらいの会心のレコードハントに出会ったのだ。

今日はそんな興奮冷めやらぬ状態で、本作のレビューを書いてみたいと思う

Hoodoo Man Bluesについて

このアルバムは、シカゴブルースの金字塔であり、1965年のリリース以来、ブルースファンの心を掴んで離さない。もちろん私も大好きな一枚である。ただ、このアルバムのUSオリジナルはステレオ、たしかモノラルは存在しなかったのでは・・・と思っていたが、なんとThe Bandのファーストのように、UK盤で発売されていたのだ。調べてみるとUKモノラル盤は1966年にリリースされた特別な一枚で、オリジナルUS盤がステレオのみであるのに対し、このモノラル盤は音の集中力と生々しさが際立つ、まさにコレクター垂涎のアイテムだ。ターンテーブルに載せ、針を落とした瞬間、シカゴのスモーキーなクラブにタイムスリップしたかのような濃密な音が部屋を満たす。まさに音の塊。この音圧、眼の前でウェルズがハープを吹いているんじゃないか?という錯覚まで感じられるくらいのすさまじいパワーであある。

この記事では、『Hoodoo Man Blues』の歴史的背景、UKモノラル盤の特性、そしてそのリスニング体験を通じて感じたブルースの魂を綴っていきたい。

アルバムの背景:シカゴブルースの頂点

『Hoodoo Man Blues』は、ジュニア・ウェルズのデビューアルバムであり、1965年11月にDelmark Recordsからリリースされた。ジュニア・ウェルズ(ハーモニカ、ボーカル)とバディ・ガイ(ギター)を中心に、ジャック・マイヤーズ(ベース)、ビリー・ウォーレン(ドラム)という布陣で録音されたこのアルバムは、シカゴブルースのエッセンスを凝縮した作品だ。ウェルズの情熱的なボーカルとハーモニカ、バディ・ガイの鋭くも魂を揺さぶるギターが織りなすサウンドは、ブルースの歴史に深く刻まれている。批評家からは「1960年代の最高のブルースアルバムの一つ」と称され、ポール・バターフィールドやエリック・クラプトンといったミュージシャンに多大な影響を与えた。ナショナル・レコーディング・レジストリにも保存されるなど、その文化的価値は計り知れない。

収録曲は以下の通りだ:

  • サイドA:
  1. Snatch It Back and Hold It
  2. Ships on the Ocean
  3. Good Morning Schoolgirl
  4. Hound Dog
  5. In the Wee Wee Hours
  6. Hey Lawdy Mama
  • サイドB:
  1. Hoodoo Man Blues
  2. Early in the Morning
  3. We’re Ready
  4. You Don’t Love Me, Baby
  5. Chitlin Con Carne
  6. Yonder Wall

どの曲もシカゴブルースの伝統に根ざしながら、ウェルズとガイの若々しいエネルギーが注入されており、ファンクやロックの要素も感じられる。特にタイトル曲「Hoodoo Man Blues」や「Good Morning Schoolgirl」は、ウェルズのハーモニカとガイのギターが火花を散らす名演だ。このアルバムは、Delmark Recordsのベストセラーとなり、ブルースの新たな可能性を示した。

UKモノラル盤の特異性:US盤との違い

今回手に入れたUKモノラルレコードの特性について詳しく触れていく。まずはジャケットを見てみよう。

『Hoodoo Man Blues』のオリジナルUS盤は1965年にリリースされたが、これはステレオ録音のみで、モノラル盤はどうやら存在しないようだ。US盤はステレオで制作され、左右のチャンネルに音を分散させることで、より広がりのあるサウンドを提供している。1曲目の「Snatch it Back」のイントロのあのギターのソリッドなこと、この盤のステレオの優秀さを物語るに足る冒頭の一音である。

一方、UKモノラル盤は1966年にDelmark Recordsを通じて英国でリリースされた特別なバージョンだ。カタログ番号はジャケットに「DL 612」と記載され、ラベルには「Made in England」の文字が刻まれている。

UK盤の特徴として、USのカバーデザインをそのまま使用しつつ、ラベルは粗いテクスチャーの紙で作られている点が挙げられる。

私が今回購入したのはジャケットはまんまUS盤と同じ、左下にもPrinted in USAを記載がある。Discogで調べるとUK盤専用のジャケットもあるようなのだが、私のはUSA盤のジャケであった。右上のステレオ記載部分にシールの剥がし跡?のようなものがあるので、もしかしたらここにモノラル表記のシールが貼ってあったのかもしれない。

STEREOのところに剥がし跡のようなものがある。

ちなみにせっかくなので購入したディスクユニオンの値札も添付しておく。

リスニング体験:濃密なブルースの魂

モノラル録音は、ステレオとは異なり、すべての音が一つのチャンネルに集約される。これにより、音の分離感は減るものの、集中力と密度が増し、まるでバンドが目の前で演奏しているかのような臨場感が生まれる。ブルースのような音楽では、このモノラル特有の「生々しさ」が特に際立つ。ウェルズのハーモニカの息遣いやガイのギターの弦の振動が、まるでリスナーの耳元で響くかのようだ。このUKモノラル盤は、英国市場向けに限定生産されたため、US盤に比べて流通量が少なく、コレクターの間では希少価値が高い。

針を落とした瞬間、スピーカーから溢れ出す音は、まるでシカゴの薄暗いクラブにいるかのような錯覚を覚える。モノラル特有の音の集中力は、期待を遥かに超えるものだった。ステレオ盤では左右に広がる音像が、モノラルでは一つの点に凝縮され、ウェルズのハーモニカとボーカル、ガイのギターがまるで一つの生き物のように絡み合う。この濃密な音は、もう、絶品すぎて言葉を失う。これぞブルーズという生々しい音が、部屋いっぱいに響き渡る。

特に印象的だったのは、タイトル曲「Hoodoo Man Blues」だ。ウェルズのハーモニカが吐き出すフレーズは、まるで魂の叫びのよう。モノラル盤では、その音がまるで胸に突き刺さるようにダイレクトに届く。バディ・ガイのギターも、レスリースピーカーを使った独特のうねりが、モノラルならではの密度で迫ってくる。「Good Morning Schoolgirl」では、ウェルズのボーカルが持つ荒々しさと繊細さが絶妙にバランスし、モノラルの集中力がその感情を増幅する。「Chitlin Con Carne」のグルーヴ感も、モノラル盤ではよりタイトでリズミカルに感じられ、思わず体が揺れる。

ステレオ盤と比較すると、モノラル盤は音の広がりこそ少ないが、その分、音楽の核心に迫る力強さがある。ブルースは、感情の生々しさや人間の苦悩を表現する音楽だ。このUKモノラル盤は、その本質を余すことなく伝えてくれる。まるでウェルズとガイが目の前で演奏しているかのような親密さは、現代のデジタル音源では決して味わえない。ブルースファンなら、このモノラル盤は絶対に聴くべき一枚だ。

ブルースの核心を刻むモノラル盤の魔法

モノラル盤の濃密な音は、ブルースの魂をダイレクトに心に届ける。ウェルズのハーモニカが吐き出す一音一音、ガイのギターが紡ぐフレーズの全てが、まるで生きているかのように響く。US盤がステレオのみであるのに対し、このUKモノラル盤は、音の集中力と生々しさでリスナーを圧倒する。ブルースを愛する者なら、このレコードを聴かずしてその真髄を語ることはできない。本当に買ってよかった。いや、出会えて良かった。そのくらい久しぶりに会心のレコードディグだったのだ。

レコードをターンテーブルに載せ、針を落とすたびに、シカゴのクラブの熱気が部屋に満ちる。このアルバムは、ブルースの歴史を体感するための鍵だ。UKモノラル盤は、ただのレコードではない。それは、ジュニア・ウェルズとバディ・ガイが刻んだ魂の記録であり、ブルースの核心であるパワー、勢い、ソウルだ。UKモノラル盤は、その音を通じて、シカゴブルースの熱い息吹を今に伝える。ブルースを愛する全ての人に、このレコードを手に取って、その魔法を体感してほしい。

これぞブルース、これぞ『Hoodoo Man Blues』だ。

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